もしもコアラが“怠ける意味”を語ったら|幸福の哲学

もしもコアラが“怠ける意味”を語ったら──
あなたは少し、あくびをしながら耳を傾けてくれるでしょうか。


木の上の暮らしと、ゆっくり流れる時間

私はコアラ
ユーカリの木の上で、今日もゆらゆらと風に乗っています。
朝も昼も夜も、ほとんどこの枝の上。

人はよく言いますね。
「コアラは一日のほとんどを寝て過ごす怠け者だ」と。

でもね、私から見れば、人間のほうが少しせっかちです。
朝の光を浴びる前に時計を見て、
夜の星を見上げる前にスマホを見て。

“やること”のほうが、“いること”よりも大切に見えるようです。

風が枝を撫でる音を聞いたこと、ありますか?
ユーカリの葉がこすれるたびに、小さな鈴のような音がします。
私はそれを聞きながら、ただ“生きている”時間を味わっています。

眠っているようで、じつは世界をゆっくり観察しているのです。


急ぎ足の世界の中で、止まる勇気を持つ

枝の上でぼんやりしていると、
人間たちの忙しい足音が、遠くから響いてきます。
「今日こそ成果を出さなきゃ」「誰かに遅れを取るな」
そういう声が風に混じって聞こえてくるのです。

私には、少し不思議です。
どうしてそんなに“早く”生きようとするのでしょう。

風はいつも、勝とうとも負けようともしていません。
ただ吹く方向へ、静かに流れていくだけ。

怠けるって、たぶん“止まる勇気”のことなんです。
何もしていないようで、ちゃんと心が呼吸している時間。

急ぎ足の世界の中では、それがいちばん贅沢なことかもしれません。


子どもの問いと、“動かない”という生き方

ある日、人間の子どもが木の下で私を見上げて言いました。
「ねえコアラ、どうしてそんなに動かないの?」

私は笑って、少しだけまぶたを開けて答えました。
「動かなくても、ちゃんと生きてるよ」

すると、その子は黙って、空を見上げました。
風が彼の髪を揺らし、雲がゆっくりと形を変えていきます。

きっとそのとき、少しだけ“怠ける意味”を感じたのかもしれません。

怠けることは、サボることじゃない。
本当は、“世界の速度に合わせる”ことなんです。

木も、風も、太陽も、みんなゆっくりです。
だから、私たちもそのリズムに身をゆだねる。
それだけで、心の奥が静かに整っていくのです。


あなたへ贈る、小さな提案

あなたも、たまには枝の上の私を思い出してください。
やることが山積みの日でも、ひと息だけ深く吸って、
「いま、この風を感じてみよう」とつぶやいてみてください。

きっと少しだけ、世界がやさしく見えてくるはずです。

私は今日も、木の上で眠ります。
夢の中で、風の話を聞きながら。


一句で結ぶ、コアラのことば

ゆっくりと
何も急がず
枝の上
眠ることさえ
生きることです

— コアラ
この記事を書いた人
うに

大学にて薬学を専攻した知識・経験を背景に「食材 × 文化 × 科学」をテーマに記事を執筆。
学生時代から「いかに効率的に覚えるか」を追求し、WAIS-IV検査ではワーキングメモリー131(上位2%レベル)を記録しました。
この「記憶の強み」と、薬学部で学んだ科学的視点を活かして、管理栄養士・薬剤師などの資格試験に特化した暗記ゴロやその他記事をまとめています。

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